2020/11/08 田中芳樹『創竜伝14』を読みました

こんにちは。ずっと好きだったシリーズの最新刊が出ていたので読みました。

13巻が出たのが10年ぐらい前のはずなので、もう続きはないかと半ば諦めていた所だったので出てくれただけでもうれしかったです。

 

創竜伝14 <月への門> (講談社ノベルス)

創竜伝14 <月への門> (講談社ノベルス)

  • 作者:田中 芳樹
  • 発売日: 2019/10/09
  • メディア: 新書
 

 

 田中芳樹は「創竜伝」で知って、「銀河英雄伝説」でハマり、「アルスラーン戦記」その他色々読んでいます。筆が遅いことで有名らしく、シリーズ途中で続刊がないものも少なくないようです。数少ない完結したシリーズである「銀河英雄伝説」は三国志が好きならハマるのではないかという傑作でおススメです。最近新アニメを制作していましたが劇場版までは見に行けてないので気になっています。単純な戦記物としても面白いですが、政治を考える入り口にもなると思います。

銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)

 

さて、今回は創竜伝です。こちらは現代を舞台とするファンタジーであり、竜王の生まれ変わりである四兄弟が様々な敵と戦っていきます。銀河英雄伝説はどちらが善か悪かはっきりとは言えないところが魅力の一つでもありますが、創竜伝はわかりやすく敵か味方が分かれているのでライトに楽しめます(やや思想の偏りはありますが)。広げた風呂敷をどう回収していくのか今後にも期待したいところです。

 

14巻は久しぶりの新刊ということで、時代が一気に変わったなということが最大の印象でした。作中の時間は半年もたっていないはずですが、スマートフォンの普及を始め、技術や情勢は大きく変わっています。アメリカが世界を牛耳る一つの大きな敵として登場しますが、今後も影響力を保てるかはわかりません。

作品の内容自体は、相変わらず倒せど倒せど敵が出てくるので、そのような時代背景の描写の方が気になってしまいました。いずれ、主人公たちも感染対策でマスクをするのか、気になりますね。(作者の書くペースが遅いせいと言うのはあるのですが)現代を舞台にしたシリーズものだと近年の大きな変化は無視できないものになりそうです。かつて通用したトリックが携帯電話の普及で使えなくなるように、小説も時代の影響を受けないではいられないのでしょう。

時代性を意識しつつ理解し、時代を超えて表れる人間の本質的な性質を感じるのが古典を学ぶ意義だとするならば、古典の範囲は通常考えられるよりもずっと広いのかもしれません。

 

 

最後にどうでもいい話をします。小学校や中学校で読んでいたシリーズを読み直したり続きを読んだりしたいと思う時はあるのですが、なかなか児童書コーナーに置いてあると入りづらく、手に取れないでいるものがあります。上橋菜穂子さんの守り人シリーズが文庫本としても出版されたように、大人でも読めるようにならないかなと思いつつ、実際読んでみたら幼稚な内容に思えてしまうのかもしれません。思い出は思い出として大事にしておくのもありなのかもしれませんね。