21/03/07 ファンタジー小説の面白さ

こんにちは。

早いものでもう3月ですね。

これまでのご縁に感謝しながら、新しい仲間を迎える準備を進めています。

さて、今回は暇を見つけては読み進めていた『守り人』シリーズについてです。

 

『守り人』シリーズとは、上橋菜穂子による「精霊の守り人」から始まるシリーズで、用心棒バルサと王子チャグムを中心に語られるファンタジー作品です。

海外でも翻訳され愛読されているようですし、NHKで実写ドラマが放送されたこともありました。

子どもの頃に、シリーズもので長く楽しめそう、読みごたえがありそうというだけで読んで以来、面白かったという印象はありながら読み返すことはありませんでした。

上橋さんの作品と言えば、他にも「獣の奏者」や「鹿の王」など児童向けのファンタジー作品があります。文庫版も出てはいますが、なんとなく子ども向けなイメージがあります。

読み返そうと思うようになったきっかけは、高田大介『図書館の魔女』を去年読んだ時に、なんとなく似ているなと思ったことでした。『図書館の魔女』は、語彙も難しく、合間合間に披露される言語学的知識は作者の専門であることもあり、かなり熱のこもった説明になっています。ただ、複雑な人の思惑が絡む事態を主人公たちが少しずつ手を打ってかえていくスケールの大きさと、そのための武器は(ファンタジーではありながら派手な魔法ではなく、)あくまでも人間の知恵や技量であるという辺りが似ていると思ったところではないかと考えています。

 

さて、『守り人』を読み返してみて、舞台設定の絶妙さに唸ってしまいました。

国内の統治システムや国際関係の中で、周縁部の者にスポットライトを当てようとするとどうしても非現実的な武芸や呪術・魔法の類によって既存の枠組みに対抗できる力を与えないといけません。そういう点では、『守り人』は歴史小説ではいられないと言えます。

ただ、少数民族や虐げられる民への視線を忘れずに、それぞれの場所でそれぞれの人物が役割を果たし、地道に痛みも伴いながら解決へ向かって行くというこの作品の魅力は、やはりリアリティのある描写や設定によってこそ生まれるものだと感じました。

作中で登場する「ナユグ」などと呼ばれる「もう一つの世界」は、普段は意識されず影響もほとんどありませんが、時折こちら側の世界との間に関係が生じます。その時ごとに、関係する人が理不尽な運命に絶望したり、希望を見出したり、苦悩したりするのですが、それらは実際には全く同じことは人生には起こりえないけれども、共感できたり考えさせられたりするのです。

 

ハッピーエンド好きとしては、基本的に子ども向けのお話は安心して読めるのもうれしい点ですが、そこに爽快感だけではなくしんみりと味わい深い読後感があるのも魅力でしょう。

 

大人も読めるファンタジー小説!のような触れ込みで、いくつかの作品が紹介されているサイトがありました。今後も時間を作ってファンタジーの世界を旅したいですね。