21/04/12 『稲の大東亜共栄圏』

こんにちは。4月になってしまいました。

反省の多い前年度でしたが、切り替えて頑張っていきたいと思います。

 

今回は、藤原辰史『稲の大東亜共栄圏』の感想です。

 

 

大東亜共栄圏は、言わずと知れた日本のアジア侵攻の大義名分であり、日本が指導者となってアジアを栄えさせようという思想です。

 

皇民化政策として、朝鮮人に日本語を教え、改姓を強要したということは歴史の授業で学びますが、それが稲作文化についても行われていたというのが本書の大まかな主張です。

品種改良を通して耐冷性や耐肥性を獲得した品種を栽培させることを中心に、満州や台湾で内地向けのコメを生産していたようです。

その背景には、丈が低く丈夫で、肥料を増やしても倒伏しにくく収量が増える稲を、日本の民族性と重ね合わせ、「稲も亦大和民族なり」と考える思想があったとも紹介されています。

また一方で、肥料を与えなくては収量が在来種に劣ることから、日本の化学肥料の市場としての期待があったことも説明され、その後「緑の革命」をはじめとするアグリビジネスの原型とも見ることができると指摘しています。

 

遺伝子組み換え技術への評価は未だ分かれるところですが、都合の良い性質を発現させるべく交配を繰り返す品種改良は政治的思惑とも絡まってこの時代から存在していたということです。

 

米作りということでいえば、新潟県は有名な産地の一つですが、その背景には耐冷性がありかつ味も良い品種が開発されたことがあるのは見過ごせません。科学的征服という側面こそありませんが、「優良」品種がシェアを高め、遺伝子の多様性が失われる事態は他人事ではありません。

 

ただ、優良品種の遺伝子の価値は高く評価されており、近年では勝手に持ち出されるのを防ぐために種苗法が改正されるほどです。

より育てやすく、商品価値の高いものを求めてしまうのは生産者・消費者ともに仕方のない心理ではあるでしょうが、それが管理や支配に結びつきかねないということは考える必要があるのではないでしょうか。

 

 

話はやや飛躍しますが、教育と農業は重なるように思われる部分がなくもありません。

不必要な選別や、肥料依存(教材依存?)の教育が行われることがないように、気を付けたいものです。

 

 

ちなみに、米作りとアクションをどちらも楽しめるゲーム「天穂のサクナヒメ」も面白いので、ぜひプレイしてみてください。