20/10/11 対面か遠隔か

こんにちは。

先週から後期の授業が始まりました。あまり感染者が出ていない地域でもあることから、大学の方針としては、授業を間隔や換気等に気を配った上で対面で行うことができるということになっており、大体の授業が対面、一部がオンデマンド形式(映像や資料を見て課題に答える)で始まりました。前期、大活躍だったZOOMを使っての授業は一つもなく、感染が拡大しない限り今期は出番がなさそうです。

当たり前のように、対面で授業を受けてきましたが、にわかに遠隔という選択肢を見てしまったので、今回は考えを整理するついでに書いてみたいと思います。

1.対面のメリット、デメリット

説明は不要かと思いますが、教室に受講者と授業者が集まり、黒板やプロジェクターなどを使って授業をするスタイルです。

メリット

・情報量が多い:音声や文字だけでなく、実物を見せたり(回覧したり)、しぐさで示したりでき、授業者が移動することもできる。学生の様子も観察しやすい。

・応答が容易:ZOOMでもやり取りはできますが、ラグがあったり、通信回線や機械の状態に左右されたりと不安要素もあり、そういったことを気にせずにやり取りが容易です。また、うなずきやちょっとした表情の変化も比較的観察しやすいでしょう。

・人間味がある:表現としてこれが適切かわかりませんが、画面越しに人に会うのと、目の前にいるのでは感覚としてはやはり違います。対授業者もそうですが、特に受講者同士のコミュニケーションは圧倒的に有利です。

 

デメリット

・感染対策が必須:間隔や換気に気を遣い、物を手渡しでやり取りを避けるなど対策は必須です。大人数の場合だと、大きい教室や講堂で授業することになりますが、特に講堂は机が小さく授業には不便です。また、マスクを着用しなくてはいけないというのは特に話す人にとっては地味に厄介です。

・その場に居なくてはいけない:教育実習などで授業に行けない場合も困りますし、移動の手間が発生するので、前後の行動も制限されます。特に遠方から通う人は1限に間に合うために起きる時間が大きく変わるなど影響が大きいでしょう。

 

どっちともいえない

・準備が容易?:対面で紙ベースならば、極端に言えば、チョーク一本、紙とペンだけのような授業も成立しますが、パソコンにカメラとマイクをつないで、部屋を作ってという手間が発生します。資料を使うとなると、資料をあらかじめスライドにしたり、アップロードしたりしなくてはなりません。とはいえ、これは授業スタイルにもよるところが大きいでしょうし、印刷する必要がなく、いつでも資料をアップロードで配布できるというのはメリットにもなりえます。

・グループワークがしやすい?:これは以前ならば間違いなくメリットだったのですが、感染対策の関係であまりグループで話したり作業したりというのは推奨されていないようです。

 

2.ZOOM等のビデオ通話アプリ(遠隔・同期型)

複数の端末をつなぎ、話したり資料を見せたり、チャットを使ったり、アプリによってはより小さなグループに分かれて活動したりも出来ます。

メリット

感染対策になる:いわゆる3密を回避することが容易にできます。

座席による当たりハズレがない:それなりの端末と回線があれば、みんなが最前列のように話も聞きやすく、資料も見やすいので、授業に集中できます。

世界のどこにいても参加できる:学区はおろか、日本のどこでも、世界のどこでも(もしかしたら諸事情で使えない国もあるかもしれませんが)参加できます。通学も必要なく、病院で寝たきりでも参加できます。人数制限もないわけではありませんが、通常の大学の教室よりは多くの人が参加できるでしょう。

 

デメリット

・機器コスト:端末を買い、回線を引くのにはお金がかかります。スムーズに映像を送受信するにはそれなりの品質のものを買わなくてはいけません。対応できない家庭への補助として、学校の備品を貸し出したり、通信費を支給したりと様々な対策が取られはしましたが、どれくらい活用されたのでしょうか。

・様子が窺いにくい:学生がちゃんと話を聞いているのか、カメラに映る情報だけではわかりにくいですし、音声をミュートにされていると、話がウケているのかシラケているのかわからずやりにくいです。

・不安要素が排除しきれない:突然端末がフリーズしたり、アプリが落ちたり、通信が切れたりということがどうしても起こります。録画しておいて後から保障するという手段も取られていますが、ICTを使うと予想できない不具合は起こるものだと覚悟するしかありません。

 

3.オンデマンド(遠隔・非同期型)

映像や音声を収録しておいたり、資料、外部の素材を見せたりして課題に答えさせる方式です。

メリット

いつでも受講できる:たいてい1週間から2週間程度の期間の中で、都合の良いときに取り組むことができるので、授業のある日に都合が悪かったり体調を崩したりしていても、ついていくことができます。端末が不調でも、何度かやり直して調子のよいときに取り組めます。

自由度が高い:分からない単語が出てきたら、一度止めて前のノートやインターネットで調べることができますし、聞き取れなかったらちょっと戻して聞き直すこともできます。わかるまで聞けるので、やる気さえあれば身に付きます。

 

デメリット

自己管理が必要:後回しにせず、スケジュール通りに課題を提出するのは、私のようないい加減な人間には意外と難しいことです…。

理解が十分か確かめにくい:課題が提出されてみないと、話が伝わったかを確認できず対応が遅れがちになります。また、受講者側としても他の受講者の様子を見られないので、自分の理解でよいか確認しにくいです。適度なフィードバックが必要になります。

本人か確認できない:本人の映像を提出させるといった課題でない限り、本当に受講者本人が受講しているか確かめることが難しいです。対面でも大人数であれば代返のようなことがまかり通りますし、課題の提出となると本人がやっているかどうかは必ずしも保証できませんが。

 

以上、メリット・デメリットを考えてきました。とりあえずの思い付きなので他の意見もたくさんあるかと思いますので、何かあればコメントでもしてください。

 

さて、これを踏まえて、どう考えるかですが、授業形態の選択肢が増えていることに気づき、意識的に使い分けていくことがこれからは必要だと思います。

ビデオ会議アプリでもZOOMだけではないし、オンデマンドのやり方にも様々あるでしょう。それらを使い分けることは教員側にとっても負担だし、受講者としてもどの授業がどの方法で行われているかを把握することが難しくなるとも考えられます。

ただ、大学のように多くの授業が開講されるのと違い、多くの小中高ではそう多くない授業の時間割で生徒は学んでいます。収録して使いまわせばいい説明と、その場にいて合わせないとできない説明はなるべく区別したいですし、繰り返し演習して身に付かせたいことに授業時間を使うのはもったいないです。

少なくとも週に何時間も持っている国語などでは、単元内の位置に応じて授業形態を工夫し、場合によってはある曜日は個人作業の日などと割り切ってもよいかもしれません。言うほど簡単ではないでしょうし、設備の関係でできないことも多々あるでしょうが、一度可能性を見てしまった以上、対面でやるならそれだけの理由を持って授業を行うようにしていかないと、他のコンテンツに負けるかもしれないとは思うようにしておきます。

最後になりますが、授業の効率という観点で最適と思われる方法でも、人間関係を築き、人との付き合い方を学ぶという点からするとベストとは言えない可能性には十分気を付ける必要があるでしょう。少なからぬ時間を学校や学習に割いており、教科教育と学級経営が無関係なものではない通り、人間関係は別の場で学んでくださいというわけにはいかないはずです。

大学での学びと、小中高でのそれぞれの学び等を考えると、今回の整理は大雑把に過ぎたと思います。また、新型コロナという特殊な状況に起因する問題と、授業形態特有の問題をあえて分けてはいませんがいずれはわけて論じる必要が出てくるとは思います。そんな課題はありつつも、とりあえず本日はこんなところで。