20/09/13 ディベート合宿振り返り

こんにちは。

先日、ゼミのメンバーでディベート合宿を行いました。

今回の論題は、「政令指定都市及び特別区以外において、若者定住促進奨学金返還支援制度を導入すべし」でした。地方の大学に進学し、その県で就職すると奨学金の返済を免除する制度です。

特定の職種へ限定や上限付き補助などで行っている県や市もある制度ですが、これについて討論しました。

感想を書きます。

 

 

・立論を書く難しさ

ディベートの立論では、データに基づいてメリット・デメリットの発生過程を論じることが求められます。これが意外と難しく、何となくの予想や、起こるだろうけれどデータを出しづらいものは弱い立論になりがちです。また、メリット・デメリットはいくつか考えられますが、時間に合わせて2点に絞るようにしたので、どれが強く、反論されにくいのかという戦略も試されます。

またジャッジに聞かせるのがメイン(事前に資料を提出するやり方もある)なので、聞き慣れない単語や数字の出しすぎには注意が必要です。用語や数字があると一見しっかりしていそうに見えますが、ディベートでは伝わりにくいことがありました。

 

・質疑応答の難しさ

相手の立論に対して、粗をあぶりだし、反駁につなげるために質疑は必要不可欠です。ゲームの「逆転裁判」シリーズでは「ゆさぶる」という行動で、証言について確認したり、質問したりします。ここからムジュンが出てくることが多く、その後の反撃の大事な準備段階です。ディベートでも、用意された立論よりも穴が見つけやすいので有効活用したいところですが、簡単ではありません。ただ質問するだけならともかく、その後、反駁で自分に有利に働くように、相手にとって嫌な質問を考えるのは練習が必要そうです。

また、これに対して答える方も、質問には答えつつ不利な情報は伝え方を考えるなど駆け引きが必要です。一方で、立論でわざと甘いところを作り質疑応答で逆にアピールする戦略も考えられます。

 

・反駁

言わずもがな一番難しいのは反駁でしょう。相手の立論に対して、議論の不備を指摘し成立しないように追い込むのですが、わかりやすくダメな立論を作ってくる相手はなかなかいませんので(少なくとも院生同士だと)、質疑応答や手持ちのデータを使いつつ、なんとか変なところをついていかなければいけません。ただ、その際に新しい論点を出して別に吹っ掛けたり、感情的に訴えたりという(割とやりがちで実は有効な)手段は使えません。下準備をしっかりしていなければ、相手の言うことを鵜呑みにして困ってしまいそうです。

 

・ジャッジ

ジャッジは、それぞれの立論・反駁を比較しどれぐらい耐えていたかを評価し、判定を出します。ポイントはそのディベート内で出されたものだけを判断してジャッジするところであり、自分の知識や他の回の議論等に引っ張られてしまいそうになるのを必死にこらえて考えました。ただ、どんなに頑張っても自分の判決が客観的に見て妥当かどうかには自信は持てませんでした。ある程度の慣れは必要でしょうが、責任を持って白黒つけるのは大変でした。

 

ディベートはあくまでもゲーム

競技ディベートは、限られた時間の中で弁舌を振るいジャッジを説得するゲームであり、相手の弱みに付け込むのは当たり前、アピール力も必要です。相手の主張を聞き、時には引き出して、理解し共感するというのとはかけ離れたコミュニケーションと言っても過言ではありません。ただし、ディベートで求められるような厳しい話の聞き方と、それに対応できる話し方は大人になるまでに身につけたい能力です。

実際には、判定を下す人は、議論だけを見て決めず、人柄や義理、自身の意見などにも左右されますし、アピールの手段は論理的に話すだけではありません。国会や自民党総裁選など、討論をしている場面はありますが見えているものだけでは決まらないと思い知らされます。ただ、きちんと議論できる上でその他の手段を使える方が結局信頼されると信じていますので、その訓練としてディベートについては研究していきたいと思います。

 

・テーマ設定

今回のテーマは、肯定側有利だったようで、4戦とも肯定側が勝利することになってしまいました。そのような論題がないとは思えませんが、訓練用としてはふさわしくありません。また、有利不利とは別に、複雑で難しいテーマだったという感じもしました。シンプルで考えやすいが奥が深いテーマを考える必要がありそうです。

(ちょっと目新しいテーマにしようとしすぎて、変なのにしてしまったというところもあります。使い古されたテーマを避け過ぎず、良いテーマを選ぶ必要がありそうです。)

 

・ディベカッションへの接続

当初の構想では、ディベートで議論する力を付けた後に、勝ち負けを超えて共に納得できるよりよい結論を考えるディベカッション(ディベート+ディスカッション)につなげていこうと思っていました。

ただ、やってみるとディベートをちゃんとできるようになるためにも少なからず場数が必要で、ディベカッションにつなげるのは簡単ではなさそうです。ディベートで評価が分かれる論点があれば、「じゃあどうするか?」を考えやすかったのかもしれませんが、そういう論点がはっきりと出そうな論題を選ぶことから始まりそうです。

批判的思考に基づく厳しい議論と協働的態度による止揚がどちらもできる大人を育てたいというのが私の願いです。